gracn’s blog

書籍紹介や身の回りのことについて書きます。今度こそ、書きます。

【書籍紹介】『マリアビートル 』&『武士の家計簿』

(小説)

『マリアビートル 』伊坂幸太郎

個性的なキャラクターそれぞれの視点に切り替わりながら物語が進んでいく。

 

盛岡行きの東北新幹線、地方の大物の息子を誘拐犯から奪還した殺し屋蜜柑と檸檬、二人から身代金入りスーツケースを奪う七尾こと天道虫、地方の大物とその息子を狙うスズメバチ、そのスズメバチを狙う狼、子供の仇を討とうとする殺し屋木村、それをいなして逆に利用しようとする中学生王子、多数の殺し屋が同乗し奪い合い騙し合い殺し合う。更には謎の神父風塾講師、犯罪あっせん業の女性マリア、人の背中を押す殺し屋槿、木村の両親…、魅力的?なキャラクターのオンパレードが巧みな伏線で絡まりつつ大団円へ。

 

登場人物や設定はサスペンスやミステリーだが、機関車トーマス好きやこれでもかという程不運の持ち主などどこか抜けた殺し屋達のキャラクターは伊坂ならではのコミカルさがシリアスさをよい意味で取り払っている

 

複数キャラクターがだんだん絡み合って進んでいく話しでは恩田陸のドミノも面白い。この二人と東野圭吾は安定して楽しめる流行作家。
伊坂はコミカルさ、東野はお洒落さ、恩田はファンタジー風といった特徴はあるが、腕は皆確か。

 

(歴史/教養)

『武士の家計簿』磯田道史

加賀藩誤算用者猪山家の37年分の成功な家計簿。その家計簿から江戸~明治の武士の暮らしぶりを解き明かす。

習い事、家族や同僚との付き合い、生活用品、詳細な暮らしぶりから今との相違点や日本人の特徴が見えてきて面白い。

 

✓「算術から身分制度が崩れる」という現象は、18世紀における世界史的な流れであった。

(国家と軍隊を管理統制するための数学(大砲の弾道計算と地図の測量)、幕府や藩の行政のための数学(税や支出入の管理))

✓18世紀後半には加賀藩士の3人に1人以上が婿養子

✓「領主が領地に足を踏み入れない領主制」 ⇒ 明治維新時の領主権撤廃がスムーズに進んだ背景

✓国家というものは、その時代ごとに「最も金を喰う部門」を持っている。江戸時代でいえば大奥。近代になると海軍である。

✓猪山家(親子)の年収は米価換算で年収250万、現代感覚(大工の給料換算)で1230万円。借金は年収の2倍(武士の平均?)。

✓借金解消に向けた家財の売却、大半が衣類、茶道具180万、書籍56万、食器、家具、計1025万。

✓猪山家の平均消費性向※は91.9%。現代日本は1963年で83.7%、2001年で72.1%。

 ※平均消費性向=消費支出÷可処分所得。岡島家は猪山家に負けてない。

✓猪山直之のお小遣いは5840円/月。(母の4分の1、嫁よりも少ない)

✓武士の離婚率は高い。宇和島藩士の調査では56組中20組が3年以内に離婚。20年続いたのは4分の1。

✓支出の3分の1は「武士身分としての格式を保つために支出を強いられる費用」

 召使×2、親類・同僚との交際費、儀礼行事(元服とか)、先祖神仏を祭る費用(葬儀費用は年収の4分の1)。

✓「寺と加賀料理」という百万石金沢の観光資源は、このように(武士の見栄出費)して培養されたのである。